UXデザインとは、ユーザーの目線から見て使いやすいデザインのことです。ユーザーが製品やサービスを認知する段階から使用した後まで、いかに快適でいられるかを考慮します。
この記事では、UXデザインの概要や7つの原則とともに、UIやCXとの違いについて解説します。製品やサービスを通してユーザーがより良い体験を実現できるように、ぜひ参考にしてください。
UXの概要
UXとは、顧客体験や顧客体験価値のことです。「User Experience(ユーザーエクスペリエンス)」が略され、UXと呼ばれています。1995年にドナルド・ノーマン博士がUXの概念を発表し、広く知られるようになりました。UXは、製品やサービスの利用においてユーザーに生じる反応です。製品やサービスに関連して生じる感覚や感情などは、すべてUXに含まれます。
UXデザインの概要
UXデザインとは、よりよいUXを実現するため、ヒューマンファーストの考え方に基づいて製品やサービスをデザインすることです。ユーザーが製品やサービスを知るタイミング以降で発生する影響を考慮し、使用中はもちろん、使用後まで対象となります。
UXをデザインするというよりも、UXを実現するためにデザインを工夫するという考え方がUXデザインです。デザインに徹底的にこだわり、顧客に最高の体験を提供できるようにする必要があります。
UXにおける7つの原則
デザインにおいてUXを実現するための考え方として、デザイナーのピーター・モービル氏が提唱した「UXハニカム」という7つの原則があります。ここでは、UXハニカムの7つの要素を挙げ、それぞれの内容を解説します。
1.Useful(役に立つ)
「Useful(役に立つ)」は、製品やサービスの有用性を表しています。ユーザーにとってその製品やサービスに価値や必要性があるかは重要なポイントです。
仮に製品やサービスがユーザーに求められていなかったり、ユーザーの悩みを解決できなかったりする場合、わざわざ作る意味がありません。企業が製品やサービスを生み出すうえでは、何らかのかたちでユーザーにとって有用である必要があります。ユーザーにとって役に立つ製品やサービスを作るためには、ユーザーの価値観やニーズなどに対する理解が求められます。
2.Usable(使いやすい)
「Usable(使いやすい)」は、ユーザーにとって使い勝手のよい製品やサービスを生み出すために重要です。たとえ高機能で便利な製品やサービスを提供しても、使いにくければユーザーの満足度は上がりません。むしろストレスが溜まり、製品やサービスに対してネガティブなイメージをもつ恐れもあります。
ユーザーにとって使いやすい製品やサービスを実現するには、直感的に使えるデザインにする必要があります。人間の感覚を考慮し、頭を使わなくても自然と効率的に利用できる設計を目指しましょう。
3.Findable(探しやすい)
「Findable(探しやすい)」とは、ユーザーが製品やサービスをすぐに見つけられる環境をつくることです。ユーザーにとって理想的なデザインや機能を備える製品やサービスであっても、ユーザーに認知されなければ利用してもらえません。必要としているユーザーに対し、着実に製品やサービスの情報が届くようにする必要があります。
また、製品やサービスの使い方や機能の探しやすさも大切です。製品やサービスが使いやすく機能的であっても、それをユーザーが理解できなければ、うまく活用できない可能性があります。ユーザーがすぐに使い方や機能を把握できるよう配慮しましょう。
4.Credible(信頼できる)
「Credible(信頼できる)」とは、ユーザーが製品やサービスに対して抱く信用です。新しい顧客を獲得し、既存の顧客との関係を維持し続けるためには、信頼性が特に重要となります。顧客との信頼関係を構築できると、企業そのものや製品・サービスの長期的な運営の実現につながるでしょう。
信頼の獲得や維持のためには、ユーザーに対して真摯な対応を心がけるべきです。ユーザーにとって何が最適か常に考えて製品やサービスをデザインし、提供する必要があります。嘘をついたり誤魔化したりせず、ユーザーと向き合うことが大切です。
5.Desirable(好ましい)
「Desirable(好ましい)」とは、製品やサービスのデザインがユーザーの好みに合致しているかどうかを表します。ユーザーにとって魅力的なデザインを実現できれば、ユーザーは製品やサービスに対して良い印象を抱くでしょう。また、より快適に製品やサービスを使用できるようになります。
UXにはユーザーにポジティブな感情を抱かせる目的があるため、単に機能性を高めるだけでなく、ユーザーの感覚にとっても好ましいデザインを考える必要があります。
6.Accessible(アクセスしやすい)
「Accessible(アクセスしやすい)」は、ユーザーが求めるタイミングですぐに製品やサービスを利用できる状態を意味しています。アクセスのしやすさは、製品やサービスの利便性にも直結するでしょう。
具体的には、身体的・精神的な制約の有無にかかわらず、すべての人にとって利用しやすい製品やサービスを作る必要があります。たとえば、音声で操作できる製品やサービスなら、目が不自由な人や車を運転している人も無理なく使用できます。
なるべく多くの人にとってアクセスしやすい製品やサービスを実現するには、使用される場面をさまざまな角度から想像してデザインを検討することが大切です。
7.Valuable(価値がある)
「Valuable(価値がある)」は、ユーザーにとっての製品やサービスの価値を表しています。ユーザーにとって価値があるかどうかは、製品やサービスを使い続けてもらううえで重要な要素です。製品やサービスが自分にとって無価値だとユーザーが判断した場合、使い続けてもらえる可能性は低いでしょう。
ここでいう価値は、金銭的な価値だけではありません。たとえば、問題を解決したり物事を効率化できたりする製品やサービスは、ユーザーにとって価値があります。ユーザーに価値があると感じてもらうには、何らかの側面でポジティブな印象を与える必要があります。
UXデザインが重要視される背景
UXデザインが重要視されるようになった背景には、人々の考え方の変化があげられます。現代は物質的に豊かになり、単に物を所有するだけでは満足感を得られなくなっています。物を所有することよりも、魅力的な体験を重視する人が増えました。
また、技術が進化し、多くの企業が機能的な製品やサービスを提供できるようになっています。機能面での差別化が難しくなり、ユーザーの心をつかむために優れたUXデザインを重視する企業が多くなりました。
UXと似た概念との相違点
UXと似た概念として、UIやCXがあります。それぞれには、どのような違いがあるのでしょうか。以下では、UXとUIやCXの違いについて、具体的に解説します。
UIとUXの違い
UIとは、ユーザーの目に触れるもの全般を表しています。具体的には、見た目やレイアウトなどのことです。
製品やサービスとユーザーの接点とも言い換えられます。「User Interface(ユーザーインターフェース)」を略し、UIと表現されています。UXは製品やサービス全体によってもたらされる顧客体験や顧客体験価値を表しており、UIはUXの一部に含まれる概念です。
CXとUXの違い
CXとは、顧客体験の価値のことです。ユーザーが製品やサービスに触れる前から、購入して実際に使用した後までの顧客体験によってもたらされる価値を指しています。
CXは、ユーザーが製品やサービスを購入する前から購入した後までに発生した価値をすべて含んでいます。よって、UXよりもさらに広い範囲が対象です。製品やサービスから直接もたらされる価値だけでなく、販売やアフターフォローの過程で生じる価値もCXに含まれます。
まとめ
体験に価値を感じる人が増えている現代では、UXデザインの重要性が増しています。UXデザインを実現するには、製品やサービスの価値を常にユーザーの目線から検討する必要があります。そのうえで、今回解説した7つの原則を特に重視すべきです。
SHIROには、受賞歴のあるデザイナーや経営コンサルタントの経験をもつサービスデザイナーなどが在籍しています。高品質なUX設計やデザインを一般的な価格帯で提供可能です。ビジネスへの影響を深く考慮したUXデザインを提供できるため、ぜひご相談ください。